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第27回●紫式部(生没年不詳)

 突然ですが、次は日本の古典から。古典といえば『源氏物語』にとどめをさす。

 例え日本国の総理大臣を知らなくても、恐らく本を読んでいない人でも日本人なら紫式部の名を知らない者はいないだろう。この「源氏物語」というのは、長編小説としては世界で最も古いといわれている。

 (では何で紫式部なんだ、という方に反論。紫式部は小説家でもあるが、日本の昔の詩である和歌の才能があった、立派な詩人なんですぞ)。

 日本古来の和歌という定形詩の集大成、後鳥羽天皇が藤原定家らに命じて編纂させた勅撰集「新古今和歌集」には13首入撰しているし、学校でも習う「百人一首」にもある有名な歌「めぐり会いてみしやそれともわかぬ間に雲がくれにし夜半の月かな」はご存知だろう。

 「源氏物語」は西暦1001年文献初出。今述べたように世界最古の長編小説である。内容は、光源氏と紫の上を主人公にして宮廷内外のさまざまな人間模様を記したもの。

 [あらすじ]

 まず「新源氏物語」(1961年、森一生監督)の一場面を。

「帝のお使いがいらっしゃいました。でもどこへ?」
女御更衣たちがざわざわと色めきたつ宮中。その夜の伽の相手が誰か、知ろうと必死なのだ。それぞれの部屋の女房たちがそうして毎日綱引きをしているようだ。
「今宵も素通りじぁ」「今宵も藤壺です」「悔しい」
弘徽殿女御(水戸光子)は、かつて皇太子(東宮)を産んだというプライドがあるから、悔しさもひとしおなのだ。そこで毎日のように、女房たちにいいつけては、ゴミを」投げ入れたりして嫌がらせをしていた。
桐壺(寿美花代)はそんな陰湿な嫌がらせに、とうとうノイローゼになってしまうのだった。
その桐壺はお腹に天子の子を身ごもっていた。実家に帰り無事出産するが、産後の肥立ちが悪く、桐壺はなくなってしまう。
そして後年、その男の子は光源氏(市川雷蔵)となって、宮中でも人気者になっていた。その美しい姿ふるまいから女房もささやきあって、「光るお姿が素敵」と評判。
さらに時の左大臣の娘と婚儀の取り決めが。しかし・・・。

「源氏物語」の筋立ての一部分を切り取って、うまくつなげている。

 さて、こんな紫式部が「春夏秋冬」を読んだ和歌を各一首ずつ挙げてみようか。

(春) み吉野は春の景色にかすめども結ぼほれたる雪の下草
(夏) ほととぎす声待つほどは片岡の杜のしづくに立ちや濡れまし
(秋) しののめの空霧渡りいつしかと秋のけしきに世はなかりけり
(冬) 年暮れて我が夜ふけゆく風の音に心のうちのすさまじきかな

 そのまま現代詩にもなりうる妖しい叙情性を示している。

 さて先へ進もう。

 代表作、というよりもはや世界の古典といってもいい『源氏物語』は、テレビドラマを除いても実にたくさん映画化されている。

 最初は51年の長谷川一夫主演「源氏物語」に始まり、57年「源氏物語 浮舟」、これも長谷川一夫主演、61年「新源氏物語」は市川雷蔵(これが、先に挙げた作品)、66年にも「源氏物語」、記憶に新しいところでは2001年天海祐希主演で「千年の恋ひかる源氏物語」と続く。

 2011年には生田斗真、中谷美紀、真木よう子らによる「源氏物語 千年の謎」が公開された。ただしこれはかなり脚色されたもので、紫式部が源氏物語を書くことになったきっかけは、時の権力者・藤原道長が娘・彰子に一条天皇を振り向かせようとして命じたことになっている。

 ただ、これだけでも分かるように、それだけ魅力的な題材だということの証明でもある。これらはもちろん伝記ではなくフィクションの物語中心(当り前だ、誰もその時代の本物を見たものはいないのだから)だが、原作をうまく取り入れていることはいうまでもない。

 紫式部の本名は藤原香子、という角田文衛氏の説があるが、定かではない。また紫というのも後から勝手に巷間でつけられた名前だという。正しい女房名は藤式部。

 ではなぜ紫式部と言われるようになったかと言えば、「源氏物語」の中の、紫の上に由来するというのが一般的な説だ。

 藤原北家の出で、越後守・藤原為時の娘。母は摂津守・藤原為信の女(妻のこと)。

 ことほど左様に平安の昔から、男社会の中では女の存在はないがしろにされ、ために記録などはろくに残されてはいないのだ。

 幼女のころより才女として情報化社会でもないのに、宮中に聞こえていたというからよほど頭が切れていたのだろう。

 長徳4年ころに、親子ほど歳の離れた山城守・藤原宣孝と結婚、一女(藤原賢子=後の大弐三位)をもうけている。その後一条天皇の中宮(正妻)で時の権力者・藤原道長の長女・彰子(後の上東門院)に仕える。夫・宣孝は結婚して三年もたたずに亡くなったので夫婦生活は短く薄倖だったと言われている。

 さて映画の中身だが、51年のモノクロ作品を見てみよう。この「源氏」は、キャストが凄い。オールスター(古い言い方だ)で名前だけざっと並べてみよう。

 光源氏=長谷川一夫、帝=小沢栄太郎、桐壺=相馬千恵子、藤壷=小暮実千代、葵の上=水戸光子、紫の上=音羽信子、右大臣=進藤英太郎、播磨入道=大河内傳次郎、その娘=京マチ子、弘徽殿=東山千栄子。

 帝の愛妾・藤壺に恋してしまった帝の息子・光源氏だが、出世をもくろむ弘徽殿は葵の上を光源氏に押しつけて・・・というのは先にも書いた。ストーリーは原作をうまくなぞっている。なんとこの映画の監修を「谷崎源氏」でも名高い作家・谷崎潤一郎が請け負っているから無理もない。モノクロにもかかわらず、きらびやかな色彩感が画面からあふれ出ていて、まさに歴史に残る1本だ。

 ところで新古今和歌集といえば、藤原定家を忘れちゃいけません。平安時代の世界に誇る詩人だと私は思っている。私が詩を書く上で大変お世話になった詩人といっても過言ではない。

 もちろん本人に会ったことはないが(当り前だ!)、誰もが学校の歴史で習ったはず。

 「明月記」の有名な一節「世上乱逆追討、耳に満つといえどもこれを注ぜず。紅旗征戎吾事に非ず」―この明確な文学至上主義がいい。私はそんなところが大好きなのだ。隣で人が殴り合っていようが殺し合いをしていようが「おれ、しんねえ。勝手にやってろや」。これを堀田善衛は「方丈記私記」のなかで「詩人としての自覚」といっていて、ランボーと同じだといっている。その見方も面白い。

 ついでにいえば、2013年に公開されるジブリの最新作「定家と長明」にご注目。これは堀田善衛の「方丈記私記」と「定家明月記私抄」が原作のアニメだ。


第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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