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第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

 金子みすゞ、といえば、みすゞを発掘した詩人で童話作家の矢崎節夫氏を思い出す。矢崎氏がいなければ今日のような再評価はされず、未だ世に知られず埋もれたままだったかもしれないからだ。

 以前講演をお願いした折、個人的に話を伺ったことがある。その時矢崎氏は、みすゞの生きて死んだ山口県の仙崎に行って詳しく調査し、これまで知られていなかったことを公表できたことは大きな喜びだったと語っていた。

私が両手をひろげても
お空はちっとも飛べないが
飛べる小鳥は私のよう
地面を早く走れない
私がからだをゆすっても
きれいな音ではないけれど
あの鳴る鈴は私のように
たくさんな唄は知らないよ
鈴と小鳥とそれから私
みんなちがってみんないい

 右の詩はみすゞの代表作でもある「わたしと小鳥とすずと」だが、手前味噌になるが、みんな違ってみんないい、なんてまさに我々詩人のことをいっているようではないか。

 ざっとおさらいすると、みすゞは本名金子テル。捕鯨の町として知られた山口県の仙崎(現・長門市)に明治35年に生まれた。

 3歳の時に父が仕事先の大陸で死に、母の妹の嫁ぎ先に養子として出される。

 若いころからすでに詩を作っていたというが、それらはおしなべて小さいものへの愛、弱いものへの慈しみの感情に溢れている。仙崎が鯨で栄えたという事実の反面、捕鯨の残酷さをその目で見て知っていたことが影響していると考えられる。

 このころには投稿した作品を西條八十八らに「天才現る」と絶賛されている。実際、西條八十八はみすゞに会うためわざわざ東京から仙崎まで出かけていることからも、その期待ぶりが良く分かる。

 当時の「童話」「婦人倶楽部」「婦人画報」童話の専門誌「金の星」に作品が掲載され一躍その名を知られることとなった。

 大正15年には結婚し、娘を一人もうけるが、夫はみすゞの実弟(上山正祐)とウマが合わずそれが原因で、書店の経営者でもある叔父に疎まれるようになった。次第に自暴自棄になっていき、女性問題でもみすゞを相当苦しめたという。妻が詩を書いていることを知っていた夫は詩作を厳しく禁じ、終いにはみすゞにまで淋病をうつす始末で、ついに離婚を決意するが一人娘の親権をめぐって対立。

 もはやこれまでと、切羽詰まったみすゞは「娘は私の母にどうか預けてください」という遺書を残してカルモチン(矢崎説)を飲んで自死した。

 余談になるが、実弟の上山正祐氏は劇団若草の創設者で、彼がみすゞの実弟であるということも、調査の延長で矢崎氏が突き止めた事実である。

[あらすじ]

 さて映画だが、02年に作られた田中里美主演の『みすゞ』がある。これは矢崎氏が調べた事実に基づいて忠実に作られたということで、年譜通りの進行で撮られていることから「伝記映画」の部類に属しているといえる。

 1919年(大正7年)、山口県・長門市の港町・仙崎。家業だった金子文英堂という本屋の店先でテル(田中美里)は猫とじゃれている。そこへ叔母の訃報が届く。伝えに来たのは仲のいい従兄弟の正祐(加瀬亮)だった。それがきっかけで、母のミチが後妻に入るという話が持ち上がる。

 このころテルはみすゞのペンネームで詩を中央の雑誌に投稿し始めていた。そして西條八十(イッセー尾形)に絶賛されたことから、一躍童謡詩人として有名になる。

 ある日、正祐に届いた徴兵検査の結果を見てしまい、正祐が実の弟であることを知る。

 そのころ叔父は店の奉公人、葛原(寺島進)との縁談を進めていた。正祐は「家のために好きでもない男と結婚することはないよ」と、作家として生きることを勧めるが、結局叔父に押し切られてしまう。

 葛原は花街の女郎と心中し、自分だけ生き残ったという過去があり、屈折した性格だった。みすゞが妊娠すると、再び遊郭通いが始まり、挙句は病気をみすゞにうつしてしまう。それから、娘を出産した後のみすゞは病気がちになる。

 そのしばらく前には、西条八十がわざわざ東京から仙崎まで、みすゞに会いに来るということがあった。これがたった一度の対面となる。

 作詩に対して理解しない夫からは「そんなことはやめろ」と暴力を振るわれ、ついにみずゞは離婚を決意するが、今度は夫が娘の親権を主張し始めたために苦しむ――。

 田中美里が、夫に足蹴にされたり殴られるシーン、夫が女郎屋に入り浸りになり自殺未遂まで起こすシーンなどは何ともいえず憤りが湧きあがってくる。

 また、西條八十とプラットホームで対面する場面などは感動的でもあるが、彼女が26歳という若さでなぜ自殺しなければならなかったのか、当時の封建社会、男尊女卑ぶりがこの映画でよく理解できるだろう。

 みすゞの作品が特徴的なのは、曲をつけやすい分かりやすさがあることだろう。生涯に残した現在分かっているだけでも512編、全部に田中喜直、池辺晋一郎ら大勢の作曲家が曲をつけている。

「大漁」

朝だ小焼けだ
大漁だ

大羽鰮(いわし)だ
大漁だ

浜は祭りのようだけど

海の底では何万の
鰮のとむらい
するだろう

 ご存知のように東日本大震災の折り、テレビで繰り返しみすゞの詩が流されたのは、彼女の詩には、“祈り”と命の大切さが、通奏低音のように響いているからにほかならないからだろう。


第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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