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第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

 ここで、少し脱線するがお許し願おう。というのは、詩人ではなく、フランスの作家に登場願うからだ。

 デュラスは詩を発表していない。それならなぜ出すのか、と問われれば、この「インディア・ソング」(1974年、フランス)という作品は、まぎれもなく「詩」そのものだからだと答えるしかない。

 一切セリフなし。まさしく映像の力だけで表現した「映像詩」にほかならないからだ。個人的にも大好きな映画だと告白しよう。

 映画界には時に採算を度外視した、こうした「映像詩」と呼ぶべき映画が出現する。

 そのへんがハリウッドと大きく違うところだろう。文学を含めた芸術への考え方と、利益を追求するだけのハリウッド映画の違いだろう。

 話は飛ぶが、その例としてアレクサンドル・ソクーロフ監督の「マザー・サン」「ファザー・サン」やブラザース・クェイ監督の夢とも現実ともつかない白黒映像の「ベンヤメンタ学院」という映画がその代表だ。

 話を「インディア・ソング」に戻す。

[あらすじ]
 1930年代はヨーロッパ列強がインドシナに進出し植民地政策を行なっていた。インドのカルカッタ。フランス大使館の庭では、西洋人だけのナイト・パーティが開かれていた。

 大使夫人マリアンヌ・ストレッテルは美女として大使館の間でも有名だった。そのフアンは大勢いたが、副領事のラホールもその一人。というより、強引にマリアンヌに胸の内を告白して関係を迫っていた。

 そして夫との板挟みにいたたまれなくなったマリアンヌは、苦しみを精算すべく入水自殺してしまうのだった。

 ストーリーとしては大変シンプルだが、画面から滲み出てくるインド大陸独特の、夜のじっとりと汗ばむ暑さと倦怠感が、いいようのない愛の葛藤と癒しがたい心の傷口に塩をすり込むような痛みを感じさせ、それがなんとも言えない後味を残してくれるのだ。こればかりは映画を見た人しか判らない感覚ではないだろうか。

 全く会話が無く、映像だけでその人間関係の深みを表現してしまうところが素晴らしい。この映画の監督・脚本が、原作者のデュラス自身だから出来得たことかもしれない。

 デルフィーヌ・セイリグ、ミシェル・ロンスデール、マチュー・カリエールといった俳優たちの演技力にも脱帽だ。

 マルグリット・デュラスは1914年にフランス領インドシナ(現在のベトナム)ギアダンというところで生まれた。

 1984年に発表され、ゴンクール賞を受賞し世界的ベストセラーになった「愛人/ラ・マン」は、ここでの華僑の青年との性愛体験から生まれたといわれている。

 映画は1992年、フランス、イギリス合作で、香港の人気俳優レオン・カーファイとイギリス女優・ジェーン・マーチが主演しヒットした。

 またまた脇道にそれてしまったが、デュラスは、法律を学ぶように父に勧められて帰国するが、1939年に結婚することに。だが出産直後に子供を失って、以来傷心を引きずり、結局離婚することになる。

 やがてデイオニス・マスコロと再婚、1947年に待望の長男ジャンを出産するが、今度は執筆の苦しみに悩まされ、1982年にはアルコール中毒を治療するために専門病院に入院もしている。

 しかし、これほど作品が映画化された文学者もいないだろう。

 ざっと並べてみると「海の壁」(1958)、「二十四時間の情事」(1959)、「かくも長き不在」(1960)、「雨のしのび逢い」(1960)、「マドモアゼル」(1966)、「夏の夜の10時30分」(1966)、「冬の旅、別れの詩」(1967)、「インディア・ソング」(1974)、「ヴェネツィアの彼女の名前」(1976)、「マルグリット・デュラスのアガタ」(1981)、「愛人/ラ・マン」(1992)となる。

 凄い! これだけ、映画にしやすい小説家というのも珍しい。

 しかし、その中でもやはり「インディア・ソング」は「詩」そのものといわざるを得ない。それだけで、私はその感性が詩人だと思っている。

 男勝りの彼女は、1996年、遺稿「これでおしまい」を残して、パリで他界した。見事な生き様である。


第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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