■オススメ銀河座 この3本 
当サイトの専属映画評論家がオススメする映画を、週替わりで紹介します。

■ピンポイント銀河ニュース 
映画業界の最新ニュースをいち早くお届けします。


■シネマ銀河 プレゼントコーナー 
映画試写会からグッズまで、映画関連のプレゼント情報をお届けします。



■映画の中の詩と詩人 
映画の中に出てくる詩と詩人について映画評論家の視点から紹介します。

■ヨーコのいい男探し 
当サイトの専属映画評論家ヨーコが、映画に出演するいい男を紹介します。

■映画と酒とバラの日々
酒好きにはたまらない、映画に出てくるお酒のストーリーを紹介します。

■懐かしの名画 
懐かしい映画から厳選した、おススメ映画をお届けします。


■シネマの映写窓から 
映画ファンに、映画をお届けする方向からの視点でのコラムをお届けします。

■大人の映画館 発掘ニュース 
ちょっとだけアダルトな映画に関するニュースをお届けします。

■新着DVDデータ 
新作DVDを紹介します。




Dz˽ФƤȻͤˤĤƸ뤳Ȥˤʤä ˾̦



第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

 続いては、死後29年経ってピュリッツアー賞を受賞した、コアなファンがいることでも知られる女流詩人、シルヴィア・プラス(1932〜1963)。

 まずシルヴィアのプロフィールを見てみよう。

 アメリカ・ボストン生まれの彼女は、すでに8歳で詩を書いたというから、天性のものを持っていたのだろう。だが小さいころから病気がちだったと伝えられている。

 すでにこのころ自殺未遂の記録がある。躁鬱病の一種、双極性障害に悩まされていたという。早熟の天才に付きものの行動のようだ。

 それからケンブリッジ大学にフルブライト奨学金を得て留学。これが人生の転換期となった。すぐにテッド・ヒューズ(後のイギリスの桂冠詩人=1930〜1998)と知り合い意気投合、4ヶ月後には結婚してしまう。

 しかし流産と夫の不倫など悲劇が重なり、やがて不仲が高じていく。それが狂気を呼び起こしたのか、ガス・オーブンに頭を突っ込んで自殺したのだった。このときシルヴィア31歳。

 映画「シルヴィア」(2003年、イギリス)は伝記ものというより、メロドラマの要素が大きい。監督がクリスティン・ジェフズという女性だったことも、フォーカスをずらす結果となったのかもしれない。

 主演のシルヴィア・プラスにグィネス・パルトロウ、夫のテッド・ヒューズにマッチョマンで知られるダニエル・クレイグが演じている。

 [あらすじ]

 ストーリーは、シルヴィアが留学先のケンブリッジ大学のあるパーティーでテッドと運命の出会いの場面から始まる。

 すぐに恋に落ち結婚する。生活は順調にいくかに見えた。次第にテッドの詩がアメリカでも認められるようになったことでふたりはシルヴィアの故郷アメリカに帰国。新生活をボストンで始める。

 しかし、シルヴィアは不本意だったが生活のため母校スミス・カレッジで英語の教師となる。そして妊娠。デヴォンに移り、2児の母親となっていた。だがそんな幸せとは裏腹に詩作の時間がとれないことから、次第に不満が募ってゆくようになる。それが繊細なシルヴィアの神経を逆撫でしてゆく。

 ある日、テッドがバッタリ会った女性と話をしている場面に遭遇、そこからテッドがかつて浮気したことを思い出し、次第に妄想が膨らんでヒステリックに。その裏には、テッドが有名になっていくことへの嫉妬も含まれていた・・・。

 これは才能あるふたりが夫婦になると、ただで済むはずがない、という見本かもしれない。確かに芸術家がふたりでは意見が合うはずがないのだ。

 さて、シルヴィアの初期の作品を見ると未熟で実験的なものが多かった。

悪が、風が、闊歩する。
邪悪な星が音を立てて飛び
すべての金リンゴが
芯に向かって痛んでゆく間。
(中略)
彼の妻と彼の子供
手は弾丸で(蜂の巣みたいに)穴だらけ
揺りかごには
六角ボルト
そしてポケットのなかの死。
     (初期の詩「Temper of Time」から、部分)

 これが、代表作「ダディー」になるとこうだ。

あなたには無理、もう無理だわ
あなたは黒い靴 その中で
私は足のように
三十年生きてきた 哀れで青白く
息をしたり くしゃみをしたりするのにも勇気がいった。
(中略)
神様ではなく カギ十字章それは
どんな空でも通り抜けられるほどの暗黒。
女はみんなファシストを崇拝する
顔を踏みつける長靴 獣の
あなたのような獣の野蛮な心を。

 このように風刺が直截的になってゆく。この詩は16連からなる長いものだが、そのどこを切っても怨念が滴り落ちてきそうな鋭さに包まれている。

 さらに「不眠症患者」という作品ではこう歌う。

夜空はただカーボン紙のように
あお黒い深く突いた句読点の星座は
光を浴びて次から次へと覗き穴になる

 比喩の多用や、一貫してトーンが暗いのは、人生の悲惨さがそこに翳を落としているからだろう。

 一方のテッド・ヒューズばかり悪者にしていると怒られそうなので、彼の最後の詩集「バースデイ・レター」の一部も紹介しよう。

ある夕暮れロンドンの通りを歩いていると、狐の子を抱いた男とすれ違った。
――狐?
「どうしたんですか? どこで見つけたんですか」
「1ポンドで買いませんか」

 狐は丸い目をして彼を見ている。

 子供が生まれたばかりだった彼は、狐の子なんか連れて帰れないなあ、と思う。

 臭いし、恐ろしく元気な動物だし、飼うのは無理だな。

彼はそのまま変な男と別れるが、今になって、あれは何だったんだろうと考える。
もし1ポンドで子狐を買って帰ったら、それはぼくらの結婚を試すものになっただろう。

 妻のシルヴィアとは全く違った作風だが、どちらが好みかは読者による。

 最後に余談。1965年にゴードン・ダグラス監督が「シルビア」という作品を撮っているが、こちらはミステリー仕立てのエンタテインメントな映画で文芸作品というわけではない。

 ちなみに「シルヴィア・プラス詩集」(徳永暢三訳、小沢書店)、テッド・ヒューズ詩集「バースデイ・レター」も「誕生日の手紙」(野仲美弥子訳、書肆青樹社)として読めるのでお薦めしたい。


第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


Copyright (C) 2011 cinema-ginga All Rights Reserved.