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第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

 アメリカの民衆詩人で詩集「草の葉」の作者として有名なホイットマン(1819〜1892)だが、やはり前出のリルケと同じで、伝記映画というものは作られていない。ただし、彼の詩を引用した映画がある。

 『いまを生きる』(1989年、ロビン・ウィリアムズ主演、ピーター・ウェアー監督)がそれ。名作の誉高い映画だからご覧になった人も多いことと思う。

 アメリカのある全寮制有名進学校に赴任してきた英語の教師の詩を通して、彼にひかれてゆく生徒たちの愛と友情を描いたもの。

 映画の中で歌われるのは、ホイットマンの「今を生きる」である。

おお「船長」、わたしの「船長」よ、われらが恐ろしき旅は終わった、
船はあらゆる危機を乗り切り、念願の宝も手中に収めた、
港は近く、鐘の音が聞こえ、人びともこぞって歓声をあげ、
目ではどっしりした竜骨を、大胆不敵でいかめしい船体を追う、
されどおお、心よ、心よ、心よ、
おお、したたり落ちる赤い雫よ、
甲板の上にはわたしの「船長」が、
今はすでに息絶えて冷たく。
 (岩波文庫・ホイットマン詩集「草の葉」から「おお、船長、わたしの船長よ」)

 この中のキャプテン(船長)とはリンカーン大統領を指し、船はアメリカ合衆国を意味する。

 奴隷解放で有名なリンカーン大統領は南北戦争という内戦を戦い抜いた英雄でもあり、民衆の希望でもあった。しかし歴史が語るように暗殺されてしまう。

 詩人である以上にジャーナリストであり、ヒューマニストでもあった彼にとって、それは深い悲しみとなった。その精神性が「草の葉」に滲み出ている。

 ホイットマンはニューヨーク州ロングアイランドに生まれた。9人兄弟の2番目で、父親と同じウォルターだったため、普段は「ウォルト」という愛称で呼ばれていた。

 一説には同性愛者、あるいは両性愛者だったといわれているが定かではない。

 長じて南北戦争ではワシントンDCの陸軍病院で志願看護師として働いた。教師や公務員として働いたこともあるが、文学に目覚めたのは、父が投資に失敗し貧困に陥ったためわずか11歳で印刷見習い工となったことが大きいだろう。

 その後政党週刊誌で働きながら劇場通い、図書館通いが始まる。このころ(15歳)匿名でニューヨーク・ミラー紙に詩を投稿している。

 1855年、12篇の詩を収めたわずか95ページの「草の葉」795部を自費出版。しかし周囲や兄弟の評判は芳しくなかったという。それは随所に出てくる性的な言葉のためであり、2刷りを出版社から拒否されたことも。「卑猥で、くずで、わいせつ」という批評も出たほどだ。

 それでも一部の識者からは認められ始めたが、経済的に苦しくなり、ジャーナリストとして働き始める。そして南北戦争が始まる。ユニオン軍(北部諸州)の戦死広報に弟らしき名前を発見し、昼も夜も歩き続けて南部に向かったこともあった。「叩け!叩け! 太鼓を」という愛国詩を発表したのもこのころだ。

 戦争後は内務省に職を得たが、内務長官が「草の葉」を読んでホイットマンを首にしてしようとした。擁護してくれた友人のおかげでなんとか異動で済んだのだったが。それ以後も「草の葉」はいくども改訂や増補が施されたため、決定版というものが存在しないのが現実だ。

 1873年、ホイットマンは脳卒中で倒れる。俗に「臨終版」と呼ばれる最終版はなんと389篇もの大冊になっていた。

 1892年にニュージャージー州カムデンの自宅で亡くなるが、葬式には千人を越える弔問者があったとされる。

 詩人とは、かくも誤解と浮き沈みの激しい人生を送る人種らしい。


第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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