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第15回●R・M・リルケ

 この詩人ほど日本人に愛された人もいないだろう。

 ライナー・マリア・リルケ(1875〜1926)が日本の「四季派」と言われる詩人たち、とりわけ堀辰雄、立原道造、伊藤静雄といった詩人たちに強烈な影響を与えていることは知られた事実だ。

 だが、それほどの詩人なのに、未だにリルケ本人を主人公とした映画は作られていない。

 その代わり、リルケの詩や作品の中の言葉を、その劇中に引用、あるいはタイトルに象徴的に使ったという映画はたくさんある。リルケは友人や出版社宛に手紙をよく書いた。そのため膨大な手紙が残された(国文社から全4卷の書簡集も出ている)。また「フィレンツェ日記」「ヴォルプスヴェーデ」といった評論もある。それらの中からリルケの言葉を引用した映画の数々を紹介しよう。

 「レナードの朝」(1990年、アメリカ)では主人公が「豹のしなやかさよ、強い足並みの 忍びゆく歩みよ そこには痺れるほど大きな意思が立っている」とつぶやく。

 「霧の中の風景」(1988年、フランス、ギリシャ、イタリア合作。テオ・アンゲロプロス監督)では「ああ、もし私が叫んだとしても、いかなる天使がそれを聞くというのか」

 「神さまこんにちわ」(1987年、韓国)ではこうだ。

 「いま、孤独な者は、これからもひとり眠れずに、モノを書き、長い手紙を書くだろう」

 他にもまだある。

 「Kissing ジェシカ」(2001年、アメリカ)では「あまりにも単調で変化に乏しい人間関係を繰り返してしまうのは、惰性だけが原因とはいえない」

 日本でもヒットした「天使にラブソングを」の続編「――2」(1993年、アメリカ)にもこういうセリフがある。

 「もしあなたが詩を書くこと以外は考えられないというなら、あなたはすでに詩人なのです」

 「エンジェル・アット・マイ・テーブル」(1990年、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド合作)というのもある。「あわてなくともよい、天使が不意に、お前のテーブルを訪れたとしても」

 この最後の作品は、リルケの詩からタイトルを採っているわけだ。このようにタイトルで引用している映画は他にも多数あるが、それは割愛しよう。

 また、「ベルリン、天使の詩」のように、詩に触発されて作られた作品もある。やはり、国民的というより、世界的な詩人というべきだろう。

 リルケはオーストリア・ハンガリー帝国人(当時)だが、チェコのプラハに生まれている。本名はルネ・カール・ヴィルヘルム・ヨハン・ヨセフ・マリア・リルケという(後に改名した)。

 父は軍人。母は良家の出身で夢想家だった。最初の子(娘)がすぐに亡くなったことから、リルケが生まれると、5才くらいまで女子の格好をさせていたことは有名だ。精神的、情操的にも当然このことがリルケの心に大きな影響を与えることになったのは想像にかたくない。

 士官学校に入学させられたが、病弱を理由に退学。もともと向かなかったらしい。その後プラハ大学、ミュンヘン大学へ進む。この頃から文学嗜好が強まり、年上の女性に恋をして処女詩集「いのちと歌」が完成する。

 さまざまな詩人や作家との交流がリルケを大きく育てていくが、何といっても1898年のイタリア旅行で得た画家たちとの親交の後、その中の一人、女性彫刻家だったクララウ・ヴェストホフと結婚したことが大きな転機といっていい。

 娘ルートも生まれたが、父からの仕送りが途絶えると生活に困窮し、リルケは一人でパリに渡り、一家は散りじりとなる。

 終生尊敬してやまなかった彫刻家の「ロダン論」を執筆しながら、パリの孤独の中、作風も叙情から脱却していく。「どんなに恐ろしい現実であっても、僕はその現実のために、どんな夢をも捨てて悔いはない」という言葉が、その決意を示している。

 1910年には名作「マルテの手記」が完成、ようやくベルリンで一家と過ごせた。

 1914年にはある女性ピアニストと恋愛関係に陥るが、リルケの方から身を引いたとされる。どうやら家族思いだったようだ。

 この年第一次世界大戦が勃発、パリに置いてきた財産はすべて散逸してしまう。これが残っていたら、後世にもっと別の作品が読めたかもしれないと考えると残念だ。

 1920年には念願の「ドゥイノ悲歌」「オルフィオスへのソネット」が完成している。その後健康状態が悪化したリルケは、26年、バラの棘に刺された傷から急性白血病が発症、同年12月29日に51歳で永眠した。

 余談になるが、リルケは「俳句」に興味をもち、「ハイカイ」というタイトルで三行詩を作っている。

バラよ、その純粋なる矛盾よ
いかに多くのまぶたの下に、誰の眠りも宿さぬことの
喜びよ

 右の詩は遺言によって墓碑に刻まれたものである。カッコイイ、と感心するのは私はだけであろうか。


第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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