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第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

 映画通は、何かと商業主義に陥ったハリウッド作品をけなすことが多いが、アメリカ映画もまんざら捨てたものではない、と思わせてくれるのがこれだ。
 一言で言うと、ナチスの魔の手から奇跡的に逃れたソフィーを愛するふたりの男の物語、となるのだが、実はそう簡単な話じゃない。見終わってみれば、特になあなあで生きてきた人には、心の中にさまざまな感情を呼び覚ましてくれる作品なのである。
 例えは申し訳ないが、東日本大震災の悲惨な状況を見て、自分のそれまでの安穏とした生活ぶりを反省したくなるのと似ている。
 「ソフィーの選択」はアラン・J・バクラ監督による1982年の作品で、原作はウイリアム・タイロンの小説に依る。では物語を述べてみることにする。

[あらすじ]
1947年、青年スティンゴ(ピーター・マクニコル)は一旗挙げようとNYに出てくる。そしてブルックリンのアパートで、ソフィー(メリル・ストリープ)と出会う。

 やがて心を許したソフィーは、スティンゴに腕の烙印を見せる。それはナチ強制収容所にいたという印だった。
 そんなある朝、ネイサン(ケヴィン・クライン)を連れてソフィーがアパートにやってくる。ふたりは一緒に住んでいる仲なのだ。三人はやがて親しくなるが、ネイサンがつぶやいた「俺たちは死ぬんだ」という言葉にスティンゴは引っかかっている。
 しかもネイサンは「ある偉大な発明をした」と豪語している。
 またある日ソフィーは、父も母もナチに捕まりアウシュヴィッツで死んだ、自分も自殺しようとしたと語る。だがスティンゴは、大学教授だったソフィーの父に教わったというある教授から、ソフィーの父はナチスの信奉者だったと聞かされて驚く。ソフィーに真偽を確かめると、確かにそのとおりだったが、ナチはそんなことは関係なく父と夫、それに息子ヤンと娘エヴァを強制的に連れ去ったというのだ。
 一方しばらく行方をくらましていたネイサンが現れ、突然ソフィーに求婚する。しかしネイサンの兄は、弟が妄想性分裂病だと告げる。
 それを聞いてスティンゴはソフィーを連れ出してワシントンへ逃げる。そしてスティンゴも求婚するのだった。するとソフィーは「アウシュヴィッツでナチの医者が、息子と娘のどちらかを実験に差し出せ」と迫ったと、告白した。拒否すると「それならふたりとも焼却炉送りにする」と。そしてソフィーは決断の末「娘を連れていって」と泣きながら叫んだというのだった。
 翌日、ブルックリンでソフィーとネイサンは自殺した。
 これが大体のストーリーだが、ラストシーン。ふたりで青酸カリを飲んで心中した部屋にやってきて発見したスティンゴは、机の上に置かれてあったディキンソンの詩集を、声を上げて読むのだ。これが次の「広いベッドを創れ」という詩である。

広いベッドを創れ
畏れながら準備して
公正な
審判の下る日を
静かに待とう
寝床をまっすぐに
まくらもまっすぐに
まくらはまるく
朝日の黄金色の騒音に
心乱されないように

 このラストシーンには、さまざまな思いが去来することだろう。アメリカ映画には少ない(ハッピー・エンドが基本だから)終わり方である。

 エミリー・ディキンソンはアメリカ・マサチューセッツ州アマーストというところで1830年に生まれている。祖父は大学の創設者、父は弁護士で下院議員にもなった人だというから環境的にも恵まれていた。
 しかし従来の研究家の説では、エミリーは家の近郊や親戚を訪ねた以外に旅をしたことはなく、空想癖のある広場恐怖症のような隠遁生活に終始したとされているが、真偽は定かではない。
 ただ17歳で大学に入るも、ホームシックで妹のラヴィニアに実家に連れ返され、1年しか在籍できなかった。また宛先がなく、送った形跡のない手紙が、死後多数見つかったことがこれらの説を後押ししているだけである。
 結局エミリーは1700以上の作品を残しているが、生前には7篇の詩を発表したにすぎず、世間にはまったく知られないまま1886年に世を去った。評価されるようになったのは死後に出版された3冊の詩集によってであり。20世紀になってからである。
 こんなロマン派的な詩が彼女の本質だった。

百年あとには
この場所を知る人は誰もいない
ここで演じられた大きな苦悩も
平和のように静かだ

雑草がわがもの顔にはびこり
見知らぬ人々が散歩にきて
もう遠い死者の
さびしい墓碑の綴字を判読する

夏の野を通り過ぎる風だけが
この道を回想する
記憶の落としていった鍵を
本能が拾い上げて?

          (「百年のあとには」中村浩一・訳)


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