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第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

 忘れてならないのが詩人中の詩人といっても過言ではない、日本人が大好きな天才、といえば言わずと知れたアルチュール・ランボー(1854〜1891)だろう。

夏の夕ぐれ青いころ、行くが楽しさ小径ぞえ、
青麦に刺され、草を踏み
夢心地、あなうら爽に
吹く風に髪なぶられて
もの言わず、もの思わず、
愛のみが心に湧いて
さすらいの子のごとく遠く僕は行く
天地のかけ―女なぞ連れたみたいに満ち足りて

 これは少々古い言いまわしだが、堀口大學訳の、ランボーの「感覚」という詩である。

 ランボーというとたくさんの人が訳詩をしている。右の堀内大學を初め金子光晴、粟津則雄、清岡卓行、鈴村和成、小林秀雄・・・数え上げたらきりがないほど。それだけ人気があるということだろう。

 イギリス、フランス、イタリア合作95年、公開の映画「太陽と月に背いて」(アニエスカ・ホランド監督)がある。これはある意味ショッキングな映画といえるかも。ポール・ヴェルレーヌ(1844〜1896)との禁断の愛の物語を描いたものだからだ。ランボーが同性愛だったというのは広く知られた事実のようで、すでに当時から文壇や社交界でも有名だった。

 しかし一方のヴェルレーヌにはちゃんと妻子があるから人間って、何を考えているのか判らないものだ。やはり詩人という?人種?は特殊なのだろうか。ただし教職についていた33歳のときに男子生徒のひとりに恋をして教職を首になっているというから、もともとバイセクシュアルだったことに間違いはないらしい。

[あらすじ]

・・・ということは、ヴェルレーヌは?両刀使い?ということだったのか。それはともかく、映画は27歳、新進気鋭の詩人ヴェルレーヌに見知らぬ年下の男から手紙が届くところから始まる。


 この手紙の相手が、まだ19歳の天才ランボーだった。手紙に添えられっていた作品を読み、ヴェルレーヌはその才能にたちまち惚れこみ、自分の元に呼び寄せる。それが地獄の始まりだったとは知らずに・・・。

 自由奔放な生き方、発言をするランボーは、やがて自分勝手にヴェルレーヌをほんろうするようになる。詩を褒めたかと思うと、そのすぐ後で「そんな甘い詩じゃだれもだませないぜ」というようなことを言ってのけるのだ。

 逃げれば追い、追えば逃げる恋のような駆け引きが続く。そしてついに一線を越えてしまう。

 こうして、やがてランボーに禁断の世界へ誘われ泥沼にはまってゆく。ふたりは傷つけ、愛し、また傷つけあう。そのいやらしいほどの繰り返し。

 だからといって、ヴェルレーヌは妻のマチルドを捨てることもできず板挟みに苦しんでいた。そしてある日、とうとうというか必然というべきか、ヴェルレーヌは切羽詰ってランボーに向けてピストルをぶっ放すという事件(いわゆるブリュッセル事件)を起こしてしまう。

 これはヴェルレーヌにランボーが「もうあんたとの仲はやめた。俺は俺の道をゆく」と言ったために、嫉妬を誘ったか、あるいは怒らせた結果ではないかと言われているが、真相は解らない。結果、ヴェルレーヌは監獄へぶち込まれ、ランボーは詩を捨ててアフリカに旅立ってしまう。

 希代の詩人同士はこうして別れることになったのだが、特別強烈なふたつの個性が、喧嘩もせずにいられるということの方がおかしいというものだろう。

 映画にはないが、一説にはその後ランボーは行商人になったといわれている。わずか二十歳の時である。

 その後彼は家庭教師、サーカス団の通訳、港湾の荷揚げ人足、傭兵までしたというから凄い。1891年、腫瘍のため右足を切断するが、それが悪化して37歳の若さで没している。

 またヴェルレーヌも妻子に見捨てられ(当然といえば当然)、方々を転々とした揚句に、貧困の内に五十一歳で娼婦に看取られながら亡くなったというから、こちらも立派?な破滅型詩人といえるだろう。

 ともあれ当時話題になったのは、新進スターとして売り出していたレオナルド・ディカプリオ(もちろんランボー役)と、ヴェルレーヌ役で怪優として名を馳せるデヴィット・シューリスのベッドシーンだ。いやらしくて思わず目をつぶった人もいたはず。撮影終了後、ディカちゃんは「もう男とのラブシーンは二度と嫌だ」といっていたとか。その気持ちは実によく分かる。

秋の日の?ヰオロンの
ためいきの
ひたぶるに
身にしみて
うら悲し

鐘のおとに
胸ふたぎ
色かえて
涙ぐむ
過ぎし日の
おもひでや。

げにわれは
うらぶれて
ここかしこ
さだめなく
とび散らう
落葉かな。
 (上田敏訳、ヴェルレーヌ詩集『海潮音』より「秋の歌」)

 右の詩は、かつてどの教科書にも載っていたほど、有名なものである。これを読んで詩を書き始めるきっかけになったという人も沢山いるはずだ。

 せっかくだからランボーの代表作「地獄の一季節」を一部。

 昔、覚えているとおりなら、おれの生活は、あらゆる酒が流れ、あらゆる心の開く饗宴であった。
 ある夜、おれは美の女神を膝に乗せた。―苦々しい女だと思った―毒づいてやった。
おれは義に対して武装した。
おれは逃走した。おお、魔女よ、憎しみよ、おまえらだぞ、おれの宝が託されたのは!
おれは、心の中から人としての希望をことごとく抹殺した。猛獣のように音も無く跳びかかって、あらゆる喜びを絞め殺した。
おれは死刑執行人を呼び求めた。非業の死をとげながら、奴らの鉄砲の台尻に食らいついてやるんだ。殻竿を呼び求めた。砂と血で窒息してやるんだ。不幸が俺の神だった。おれは泥の中に寝そべった。罪に風で体を乾かした。それから、気も狂わんばかりにひどい悪戯をやってのけた。
(門司邦雄・訳)

 ここからもランボーの尋常ではない精神構造が分かる気がする。


第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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