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第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

 続いては、これも名作映画である。アイザック・ディネーセン原作の「アフリカの日々」を映画化してアカデミー賞を席巻したもの。1985年、シドニー・ポラック監督である。
 まず物語からいってみようか。

[あらすじ]

カレン・ブリクセン(メリル・ストリープ)はデンマークに住む裕福な独身女性。彼女は友人のブロア・ブリクセン男爵(クラウス・マリア・ブランダウアー)と、地位が欲しいためだけで形式的に結婚することになった。
 1913年、夢と希望を叶えるために東アフリカのケニアへ旅立つ。所有するンゴング農場で暮らすために。ナイロビへの列車の中で知り合ったデニス・ハットン(ロバート・レッドフォード)に好意をもつ。彼から友人のバークレー・コート(マイケル・キッチン)の象牙を渡してくれと頼まれて別れた。そして農場で結婚式の後、クラブでコールと出会い象牙を渡す。
 カレンは、ブロアが勝手にコーヒー栽培をすることに決めていたことを知り、言い争いになり、怒ったブロアは出ていってしまう。
 当時第一次世界大戦が始まっており、その余波がアフリカにも及んでいた。ドイツ領との境界線に英軍の偵察基地が組織され、ブロアはそこに加わっていた。食糧の補給を頼まれたカレンは苦難を乗り越えそれを届けに行く。そこでブロアに優しくされたことがアダとなる。梅毒をうつされてしまうのだった。傷心のまま帰国するカレン。手術は成功するがもう子供は産めないと宣告されてしまう。
 冷静に戻ったカレンは再びアフリカに戻る決心をする。今度は現地の子供たちに教育を施そうと、学校を造るために。カレンはそこで、ブロアを追い出し、デニスと愛を誓い合う。
 やがてコールがペストにかかり死にそうだと知ると、カレンはデニスに結婚をせまる。しかしデニスは自由でいたいとそれを拒否。
 そんなある日火事、でようやく収穫したコーヒー豆がすべて灰になり畑を失うという事件が起きる。失意のカレンはデンマークに帰ることを決める。デニスは「金曜日に戻るから、それまで待っていてくれ」と言って出かけるが、やがてカレンは彼の乗った飛行機が墜落したことを知るのだった。
 自伝だというが、なんとも痛ましい物語で、見終わって心に残る余韻が辛い。この映画の中でカレンとハットンがラブシーン(ちょっと言い方が古いか)する場面がある。そこでカレンがコールリッジの代表作でもある「老水夫の歌」(老水夫行と訳すものもある)の中の詩を諳んじるのである。
 これは全625行からなるバラードで、老水夫が、結婚式に向かう3人の男のひとりを呼び止め、自分のこれまでの航海と、自分の犯してきた罪を告白し苦悩を語るという内容だ。

 とりあえずはその作品の一部を紹介しよう。

彼は凪に棲む怪物を侮蔑する

人々は皆、とても美しかった!
彼らは皆、死に横たわっているのに、
何千何万という卑しいやつらは
生きているのだ、私同様に。

これほど多くの死にもかかわらず、凪に棲む彼らには生があたえられていることを羨んだ。

私は腐った海を見渡し、
遠くまで眼を泳がせた。
私が腐った甲板を見渡すと、
そこには皆の遺骸が横たわっていた。

私は天を見上げ、祈ろうとした。
しかし、祈りの言葉が迸るより先に、
邪悪な囁きが喚起され、
私の心を塵のごとくに干上がらせた。

私は唇を閉じ、二度と開かなかった
眼球はドクドクと脈打っていた。
空と海と、海と空のせいで
私の疲れた眼に荷が重くのしかかるようだった。
そして私の足元には死があった。

しかし呪いは死人の目をした彼を生かし続けた。

亡者達の四肢からは冷たい汗が融けていた。
彼らは腐ることも臭うこともなく、
私を睨んだ眼差しも
決して消え去ることはない。

残された子の恨みは、天へ昇る魂を
地獄へと引きずるだろう。
あぁ!だが、亡者の眼に込められた呪いは更に恐ろしい。
七日七晩、私はその呪いの眼差しを直視していたのに、
まだ私は死ねなかった。

孤独と廻る月と行きながらも留まる星ゞへの遠き憧れ。どこへ行こうとも青き空は月と星ゞのものだ。空は彼らの安息の場所、彼らの故郷、彼らの生まれた家である故に、静かなる歓喜をもって王としての月と星ゞの帰還を待ち焦がれている。

「老水夫行」第4部から部分

 ではサミュエル・テイラー・コールリッジとはどういう詩人なのか。
1772年、イギリス南西部デヴォンシャー州セント・メアリーに牧師の子供として生まれた。子供の頃からすでに空想癖があったという。
1793年にケンブリッジに入学するも、素行不良のレッテルを貼られ退学させられる。しかし実際は保守的な当時の風潮に反発し、急進的な政治思想を語りまくったせいだという。
93年に雑誌に詩を発表、ワーズワース兄妹と知り合い98年に共著(ただし匿名だった)で「叙情歌謡集」という詩集を出版している。これが詩人としてのデビューだが、匿名にしたのは、急進的な思想を保守派から攻撃されることを恐れたからかもしれない。
詩集には「老水夫の歌」のほかに「クーブラカーン」や「クリスタベル姫」がある。
幻想的で神秘的な作風が多い。これは持病のリューマチを治療するためにアヘンを常用、中毒になり危うく廃人になるところだった。1804年には治療のためマルタ島で2年間暮らした。
アヘンを吸いながら陶酔状態で書くため、時には続きを忘れてしまったことがあると、友人に語っている。なるほどアカデミックな保守たちの逆鱗に触れるわけだ。アヘンがもとでワーズワースとも不仲となったほどだ。
1834年、アヘン中毒は改善せず、そのまま亡くなっている。


第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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