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第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

 これもオーデン自身を描いた映画ではないのでお許しいただきたい。

 ウィスタン・ヒュー・オーデン。1907年イングランドのヨークに生まれる20世紀最大の詩人のひとりといわれる。1907年没。

 日本でもたくさんの訳詩集が出ているから容易に読むことができる人気の詩人だ。

 その詩が映画「フォー・ウェディング」(1994)の中で印象的に使われている。映画そのものはいわゆるロマンチック・コメディといわれるジャンルのもので、日本でもヒットしたから見た人も多いはず。だが、使われている詩は悲しみを象徴するもので映画のストーリーの小道具的役割となっている。

[あらすじ]

 独身でモテモテのチャールス(ヒュー・グラント)は、いつも誰かと恋愛して人生を謳歌している。友人たちからも「そろそろ身を固めたらどうか」と勧められるのだが、いつもチャンスを逃がしている結婚には二の足を踏んでいた。


 いざ結婚となると相手に逃げられたり、相手がフリーになったばかりと知って、宣誓を拒んで式をめちゃくちゃにしたり・・・。

 そんな彼が、友人の結婚式に出席した時のこと。美人のアメリカ人女性キァリー(アンディ・マクダウェル)を見初め、一目惚れしてしまったのだ。本当の愛がここにあると。そして初めて結婚を意識してアタックする。しかし、いざ結婚となると気が重くなってしまうのだった・・・。

 一方彼らの共通の友人、ギャレスとマシューは周囲も認めるゲイカップル。だが彼らは結婚したくても法律が許さない。

 「愛しているのに結婚できない」ふたりと、「愛に目覚めたのに結婚に二の足を踏むカップル」―このふた組みのカップルが4つの結婚式とひとつの葬式をはさんで対照的に描かれているコメディ映画だ。

 ちなみにこのイギリス作品(マイク・ニューウェル監督)は1994年製作で、イギリスでは2005年に「シヴィル・パートナー法」という法律が成立して、同性愛カップルにも結婚に準ずる権利が認められるようになった。

 さてその中のシーンで、相手を失った同性愛者が葬式で送る言葉として詩を読む場面がある。その詩がオーデンの「フューネラル・ブルー」なのだ。

時計を止めよ 電話を切れ
骨に吠えつく犬を止めよ
ピアノもドラムも止めよ
棺を出せ 嘆きの列を通せ

飛行機を飛ばし 追悼文を書かせよ
彼は死んだと
ハトの白い首に黒い喪章を巻け
警察官は黒い手袋をはめよ

彼は私の東西南北
仕事の毎日 休みの日曜
私の真昼 真夜中 おしゃべり 歌
愛は永遠と思った だが違う

星も用はない 一掃せよ
月も太陽も とっぱらえ
海も森も遠ざけよ
慰めになるものは何もない



 オーデンの父は医師だった。3番目の子どもとして生まれている。一家は敬虔なカトリックだったので、彼も少なからず影響を受ける。1925年ロンドンのオックスフォード大学クライスト・チャーチ校に入るが、当時のロンドンは同性愛者に寛大だったことから、父親の意向もあってドイツのベルリンに移る。

 だが皮肉なことにオーデン自身同性愛者で、女性に関心がなかったことは周知の事実であったというから、宗教が問題ではなく、そのことから息子をロンドンから引き離す親の心遣いだったのかもしれない。

 彼はドイツに移る前ロンドンのパブリック・スクールの教師をしていたが辞職し、映画関係の仕事をしていた。詩と映像が親しいものだという証拠でもある。そうでなければ教師が畑違いの仕事に着くという理由が分からなくなるからだ。

 そこで偶然トーマス・マンの娘エリカと知り合う。

 エリカは度々、公然と反ナチ的発言をしてナチスから監視されていたので、オーデンは?偽装結婚?で彼女のイギリス国籍をとるのを手伝ってもいる。その彼女にオーデンは1936年「On this Island」(この島で)という詩集を献呈している。島とは当然イングランドのことを指している。

 ベルリンに移住していた9か月の間に世界は激動期に入る。エリカの影響もあってか一時はマルクス主義に傾倒したこともあった。

 1939年に欧州がナチスの台頭でキナ臭くなったので、彼はアメリカに移住し国籍を取っている。現実を直視し、正義がどこにあるかを感知することにたけた詩人ならではの行動だろう。作品の上でもナチス・ドイツがポーランド侵攻をしたことを批判して、オーデンは「1939年9月1日」という詩を書いている。

 話は飛ぶが、「ねじの回転」や「戦争レクイエム」で知られる世界的な作曲家デンジャミン・ブリテンとは「映画詩」とでもいうべき仕事をしている。

 若く有望な画家ウィリアム・ゴールドストリームと協力して、オーデンの詩にブリテンが音楽をつけた「石炭の顔」(1935)、田園を走る汽車に詩とサウンドトラックを組み合わせた「夜間郵便列車」(1936)がそれである。いわば記録映画というジャンルにぞくするが、オーデンは詩の効果を高めるさまざまな試みに挑戦していたわけだ。その意味では現代的発想といえるかもしれない。

 世界大戦後の1948年には、ピューリッアー賞を詩部門で受賞している。写真で見るオーデンは、なるほど面長のやさ男といった風貌で、同性愛者さもありなんと納得するだろう。


第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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