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第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

 さてお次は、急に現代の詩人になっちゃうけど、ヘンリー・チャールズ・ブコウスキーなんかはどうだろう。

 1920〜1994年。ドイツ人の母、カタリーナ・フェットとポーランド系アメリカ人の父ヘンリー・チャールズ・ブコウスキー・ジュニアとの間にドイツで生まれる。

 父は軍人だったがアメリカに移住してからは失業していたので、小さいころから極貧だったという。ボルチモアからロスアンゼルスに移ったが、貧しさが原因で父から度々虐待を受けていた。

 敬愛していたヘミングウエイを目標に、ロスのシティ・カレッジで芸術・文学コースを履修するが、やがて家出同然の放浪生活を始める。

 オフビート詩人、無頼派、破滅型、いろいろいわれているが、「酔いどれ詩人になるまえに」。これは世界的にカルト的人気を博す前の、めちゃめちゃな生活を送っていたころを描いた自伝小説の実に暗い映画化だ。監督はベント・ハーメル。

 映画もかなり自伝を忠実になぞっている。

 [あらすじ]

 いい女を見ればすぐにちょっかいを出し、うまく口説ければせっせとセックスに溺れるヘンリー。


 短気で酒癖が悪い。それを自覚しているから余計手に負えない。都会裏のゴミ溜めのような狭い安アパートで安酒をあおり、ボロぞうきんのように眠るヘンリー。それでも、文学への情熱がそがれることはない。

 詩が頭に浮かぶと、すぐにテーブルの上にあるシミのついた紙の裏側に鉛筆で書きなぐる。そしてまた酒を煽りグデングデンになる・・・その繰り返しだ。

 どう考えても創造的とは思えないのだが、時間があれば、この売れない殴り書き原稿(といってもチラシの裏や屑のような紙だ)を、出版社や新聞社に送り付ける毎日。それだけでもすごいバイタリティーだなと感心して見てしまう。

 新聞社から届く「残念ながら貴兄の作品は我が社の新聞にそぐわないので・・・」うんぬんという断りの手紙に怒り、部屋を飛び出しては街を彷徨する。

 ようやく運送屋に職を得ても、些細な言葉からたちまち同僚と言い争い、喧嘩をおっぱじめるのだ。しかも昼間から酒が入っているから始末が悪い。そんなことだから、どこへ行ってもすぐでクビになる。それだけでこの映画の結末が分かってしまう。

 ああシンドイ。でもシンドイなりにブコウスキーという詩人の破滅的性格が分かって面白い。

 そんな映画のキャッチコピーは「ろくでなし、なのにこんなにも愛おしい」だ。いつもながら、映画会社の宣伝コピーのうまさには感心する。

 それに主役のマット・ディロンが役にはまって怖いくらい。共演のリリ・テイラーも味わい深い演技でしめている。

 ふつう、役者は自分が売れてくると、内容が地味だったり、暗かったり、一般受けしない作品には出たくないものだ。それでも出るというからには、それなりのポリシーがある俳優と見た。

 日ごろから今の、売れる物しか作らない商業主義べったりの派手なハリウッド映画にはウンザリしているが、こうしたものを作れるんだから、まだまだ捨てたものじゃないなと思うのは私だけではないはず。

 ただこうした映画はインデペンデントといって、メジャーの配給作品ではない。メジャーの会社はとにかく儲かるものでないと作らないし金もださないし、配給もしない。いかにも拝金主義の見本みたいなところ。それだけにこうした?真面目??な作品は貴重といえるかも(だが、頭のお堅い方々ばかりが揃っている教育委員会は、目くじら立てて、見ちゃだめだというだろうな)。

 だって酒と女と薬・・・ワルにはまる材料が三拍子揃っているデカダンス極まりない映画なんだもの。間違っても文部省選定にはならない。

おれは燃えてビロードをながめる
おれは燃えて寝ている猫をながめる
おれはほかのどうしようもなくて燃えているもののあいだの
どうしようもない燃えているものだ

(中略)

いいか、とおれはいった 性悪女に出会ったのは自己だ、
女がきみをすてたというのは基本的現実だ、
基本的現実に、
遭遇したことをよろこべ

詩集「モノマネ鳥よ、おれの幸運を願え」から(中上哲夫訳)

 心の安住を求めたのか、ようやく37歳の時、バーバラ・フライと結婚するが、それも2年しか続かず離婚している。

  結局飲酒により幾度も吐血するが、最後は白血病が原因で死去。墓には「DON’T TRY」と刻まれているが、その生き様をよく表して抽象的だ。

 「やめておけ」とは、自分にいいきかせたのだろうか。それとも、後輩に対して自分のような生き方をマネするな、という意味なのだろうか。

 本邦初訳の「指がちょっと血を流し始めるまでパーカッション楽器のように酔っ払ったピアノを弾け」という長ったらしい題の詩集も、同じく中上哲夫訳で読める。


第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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