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第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

 塔和子という詩人をご存知だろうか。

 1929年、愛媛県に生まれた彼女は、1941年、13歳の時にハンセン病を発症し、当時の「らい予防法」という法律により、強制的に国立療養所大島青松園(香川県高松市)に収容・隔離された不遇の詩人である。

 当時は不治の伝染病とされていたハンセン病にかかると、家族さえも差別を恐れて実名を伏せ、絆を断ち切り下界とは完全に隔離された。結婚はおろか、強制的に子宮摘出手術をしたというから恐るべき人権侵害である。

 そして例え病気が治ったとされても偏見を恐れ、家族が受け入れないため社会に出ることすら許されなかった。そのために長期にわたる過酷な人生を送らざるを得なかった。1953年(昭和28年)に成立したこの悪法「らい予防法」が廃止になったのは、なんと43年後の1996年のことである。

ながく辛い夜にいたから
苦悩の鎖でつながれていたから
とき放たれたころ
輝くような楽しさを知った

 人に言えないような苦しい人生を味わった人だからこそ、語ることができる真実の言葉であるだろう。

 彼女は収容されていた大島青松園で、1961年処女詩集「はだかの木」を出している。64年にはキリスト教の洗礼を受けている。そして1999年の「記憶の川」という詩集で高見順賞を受賞している。

 そうした塔和子の苦難の人生をドキュメンタリーにした「不明の花 塔和子の世界」という番組が、1989年に毎日放送からテレビ放映されている。

 そして2003年には、「風の舞〜闇を拓く光の詩」というタイトルのドキュメンタリー映画が一般公開された。

 この作品は宮崎信恵監督、寺田農のナレーターによる59分の作品。彼女の詩をモチーフとして、ハンセン病の闇の歴史を追いながら現在を検証するというものだった。

 ドキュメンタリーの常道として、塔和子の背中を追いながら、ナレーターが次第に塔の心の底にあるものを引き出そうとする。

 「魂の園」という詩はこうだ。

今が錯覚の春だとしたら
強制的にふるさとを追われた
過酷なあの日は冬でした
私もいま目の前の快さにあやされながら
冬の最中に没した
あなた達のそばに少しずつ
少しずつ近づいています。

生き抜きましょう
暖かい人々の手によって成った
魂の園で
こころおきなく
この肉体から
解放されるために

 ずっと後の「悪戲」と言う作品になると、初期の自虐的な詩から比喩を織り交ぜた怒りへ移ってゆく。

そこに
ガスが発生した
ガスは缶詰にして
ゴムホースから少しずつ便ってやると
たやすく手なずけられる便利のいいしろものだった
だが或るとき人間の手をするりとくぐりぬけ
ほっておくとだんだん空気に汚染してゆくので
ガスで汚れた空気は黒い風のように広がり
人々は笑いながら
いつのまにか毒されていた
こうなるとそいつは
がぜん勢いづいて
無抵抗になった人間の上にまたがり
とどめようもなくむくむくむくむく
あばれまわるので
人間共は
苦しくなってもがき始める
すると、そいつは
ずるそうにそれを見下して
黒い口をあけ
無気味な嘲笑いさえただよわせながら
その中へ
すべてをのみつくそうとするのだ

 いくら詩を並べたところで、塔和子の味わった苦しみが分かるわけではないが、理解を手助けする、よすがとしたい。

 高見順賞の選考委員だった大岡信は彼女の詩を評して「自分の本質から湧き出てくる言葉を繰り返し追求している」と。


第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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