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第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

 次は25歳で夭折したジョン・キーツ(1795〜1821)について。

 彼もまたご存知の通り19世紀ロマン派を代表するイギリスの詩人である。
 映画は彼を主人公にしたジェーン・カンピオン監督による「ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)」というのがある。09年夏に公開されたばかりだからご覧になった方も多いことだろう。
 結ばれぬ恋。ファニー・ブーロンとの実らぬ恋。これはキーツの実話だそうだ。いわゆる伝記映画である。
 ファン・ブーロンとは、スコットランドへ旅行に行ったときに知り合った。なぜスコットランドへ旅行に行ったかというと、理由はキーツの生い立ちにある。
 父はロンドンで馬丁をしていたが、キーツがまだ子供のころ落馬事故で亡くなってしまった。その後母は再婚するも、すぐに離婚。キーツたちは祖母の家に預けられることとなった。
 そして母は結核を患い死亡する。キーツは傷心の旅に出ることに。しかしこの結核が長男でもあったキーツにうつり、後年結核を発症することとなるのである。
 婚約の翌年に発表したのが「エンディミオン」だ。
 この代表作のひとつとなった「エンディミオン」という詩の一節をあげてみる。

美しいものは永遠の喜びだ
それは日ごとに美しさを増し
けして色あせることがない
わたしたちに安らぎをもたらし
夢多く健康で静かな眠りを与えてくれる

それゆえ私たちは毎日花輪を編み
自分たちを大地に結びつけるのだ
生きるのがままならないとしても
なにもかもが意に反して
むしゃくしゃしていようとも

(中略)

また私たちが偉大な死者について
思い描く運命の壮大さや
聞いたり読んだりした美しい物語の数々
天空の一端からわたしたちにふり注ぐ
不死の飲み物のつきせぬ泉に そんな美しさを感じるのだ
(壺齋散人訳)

 エンディミオンとはギリシャ神話に出てくる若い羊飼いのことである。天空や海底を放浪してやがてセレネと結ばれるという4000行にものぼる叙事詩だが、当時は酷評され、そのためキーツは深く傷ついたといわれる。
 
[あらすじ]
この映画では、ふたりはスコットランドでなくハムスタッドで知り合う設定になっている。

1818年、ロンドン郊外の町、ハムスタッド。家が貧しかったキーツだが、若い頃から詩の才能に溢れていた。親友ブラウンは出版社の編集者で、ある時キーツを家に呼んで一緒にくらすことになった。
 隣の家のブーロン家の長女ファニーは、どこかとっつきにくいブラウンを嫌いだったが、やってきた長身でハンサムなキーツに惹かれていった。
「私の裁縫より下手な詩ね」といいながら勝手に家に入ってきては、書きかけの詩を皮肉るファニーだったがキーツも次第に心を開いてゆく。
 ファニーの母親は、風采の上がらないキーツに娘が心を奪われているのを知って交際に反対する。障害が大きければ大きいほど恋の火は燃え上がる、という文句を絵に書いたようなふたりの愛。
「彼から手紙がこないと肺の空気がなくなって死にそうになるの」
 少しでも離れ離れになるとファニーは身悶えするのだった。そのころからキーツは激しく咳き込むようになってゆく。体の健康のため、キーツはスコットランドのワイド島への旅行を半ば無理やり決行するが、これがかえって身体にさわり、繊細な詩人の身体は母と同じ結核に蝕まれてしまう。
 旅行中に、弟のトムも結核で死んだ。そのあげくがロンドンに帰ってきても病気は回復せず、泣く泣くファニーとの婚約を解消するしかなかった。
最後はローマのスペイン広場近くの安宿で、友人に看取られ短い生涯を終える。1821年2月23日のことだ。
映画はそのことを忠実に、詩人の無念さを描いて終わる。

愛する人よ
昨日が忘れられない
夢のような一日
僕は君の意のままだ
これからも昨日の優しさで
接してくれると約束を
君の輝きを
比類なき繊細なその光
心を奪われ
この体がとけていくようだ

 映画のタイトルに添えられた詩の一節だ。

 また、ブライトスターというタイトルは「輝く星よ/その誠実なきらめきは 夜空に高く/孤独を知らぬ/その目は永遠の瞼を開き/受難者が隠遁僧のごとく見守り続ける・・・」という詩からとられている。
 なんとも甘ったるいというなかれ。劇中でも、この詩を紙に書き付けて手渡すシーンがあるが、ロマンチックの極みだ。
 「貴方のためなら僕は死ぬことができる。愛が僕の信仰であり、貴方が僕の唯一の教義です」
 これは、キーツ自身が語ったとされるファニーへの言葉だが、悲劇の予告編のようだ。
 主演のアビー・コーニッシュとベン・ウィショーが繊細な輝きを見事に捉えている。
 墓碑には「その名を水に書かれし者ここに眠る」とある。まさに詩人という?人種?の儚さを絵にかいたような人生だ。
 余談だが、この映画はその年のカンヌ国際映画祭コンペテイション部門に選ばれ、翌年の米アカデミー賞・衣装デザイン賞にもノミネートもされている。
 キーツもまた、映画の中で詩が読まれることが多い。ざっと上げてみると、古くは「剃刀の刃」(エドマンド・グールディング監督1946年)、名作「逢びき」(デビット・リーン監督、1965年)、「サマー・ストーリー」(ピアス・ハガード監督、1988年)が挙げられる。他にもまだあるかもしれない。



第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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