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第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

 古今東西の映画には、いわゆる永遠の名作というものが存在するが、この映画も青春映画の傑作として名高い。

 それだけでなく、ある意味、後年映画の歴史に名を残すことになる主演女優の不慮の事故死(?)というものが、映画そのものと共に語り継がれることになった。

 それは、ハリウッドでもエリザベス・テーラーと並び称されるほど恋多き女優と言われた、ナタリー・ウッドの湖での溺死事故である。

 彼女はこの映画「草原の輝き」(エリア・カザン監督、    )で相手役のウォーレン・ビーテイと映画の延長のように恋をして婚約まで発表したが、結局破局に終わった。それ以後も、レイモンド・バー、タブ・ハンター、エルビス・プレスビー、デニス・ホッパーなどと浮名を流した。

 そしてようやく1957年にロバート・ワグナーと結婚。しかしそれも5年しかもたずに離婚。それでもふたりは72年にはヨリを戻して再婚している。まったく人間の不思議な感情には驚かされる。

 それはともかく、映画の話に戻ると、このタイトルはイギリスの桂冠詩人、ウィリアム・ワーズワースの詩からとられているのだ。そして劇中で、その詩が教室の授業で朗読される場面が出てくる。

草原の輝き 花の栄光
再びそれは還らずとも 嘆くなかれ
その奥に秘められたる力を見い出すべし
すべてを忘れることなく、また赤裸々でもなく、
我らは栄光の雲から出ずる。
神は我らが家なり。
草原の輝きはもはや戻らず 花は命を失っても
後に残されたものに力を見いだそう。
本能的な思いやりのなかに、
苦しみの末の和らぎのなかに、
永遠なる信仰のなかに、
生きるよすがとなる人の心。
その優しさとその喜びに感謝しよう。
人目にたたぬ一輪の花も、涙にあまる深い想いを我にもたらす。

[あらすじ]

1928年、アメリカ・カンザス州のある田舎町。

学校の人気者バッド(ビーテイ)とディーン(ウッド)は高校3年生。ふたりは愛し合っている。しかしセックスまでは踏み込めない。バッドの父は息子を名門・エール大学に入れようとしている。しかしその期待がバッドには重荷だった。

姉のジェニーもそんな父が嫌いで反発。ついに家を出ていってしまった。バッドはそんなことから父と折り合いが悪くなり、イライラがつのって乱暴な行動に出ることが多くなった。

そんな時、同級生のファニタに誘惑され、ついに負けてしまう。そのことを知ったディーンはショックを受け、川に身投げしてしまう。ディーンはかろうじて助かるが、救助してくれたのはバッドだった。

しかし精神的ダメージが強かったディーンは精神病院に入れられてしまう。そして、心の支えになってくれたジョニーという若い医師と婚約することに。

バッドは父の望んだ通りエール大学に入ることができたが、心が荒廃し、アルコールばかり飲むようになってしまった。結局バッドも心無くもイタリア女性アンジェリーナと結婚。

時は1929年。世界は大恐慌に襲われ、破産したバッドの父は飛び降り自殺してしまう。

やがてディーンは病が癒えて田舎でひっそりと暮らすバッドのことを聞き、訪ねてゆく。そしてアンジェリーナとつつましく暮らしているバットを見て、ディーンは静かにそこを去ってゆくのだった。何とも切なくも美しい映画ではないか。青春とは、かくも儚いものかと思ってしまう。

さて、その詩人、ワーズワースについて語ろう。1770年にイングランドの「湖水地方」と呼ばれる美しい町、コッカマスに生まれる。父は貴族に仕える法律家で、ウィリアムは5人兄弟の次男だった。

家庭の問題からひとつ年下の妹ドロシーとは、10年間も離れ離れで暮らすことに。ケンブリッジに入学するが、フランス革命に共感し渡仏。そこで知り合ったアネット・ヴァロンと恋仲になり娘カロリーヌを出産する。しかし英仏戦争や宗教の違い、それに経済的困窮のためひとりで帰国するしかなかった。そんな失意の彼を救ったのは妹ドロシーだったという。

1798年、出会ってすぐに意気投合したサミュエル・テイラー・コールリッジと共著で「抒情詩集」を発表している。

やがて湖水地方にコテージを構え、そこで名作「水仙」が生まれるが、これにはドロシーからの影響があったと言われている。「水仙」とはこんな詩だ。

谷を越え山を越えて空高く流れてゆく
白い一片の雲のように、私は独り悄然(しょうぜん)としてさまよっていた。
すると、全く突如として、眼の前に花の群れが、
黄金色に輝く夥(おびただ)しい水仙の花の群れが、現れた。
湖の岸辺に沿い、樹々の緑に映え、そよ風に
吹かれながら、ゆらゆらと揺れ動き、踊っていたのだ。

夜空にかかる天の川に浮かぶ
燦(きら)めく星の群れのように、水仙はきれめなく、
入江を縁どるかのように、はてしもなく、
蜿蜒(えんえん)と一本の線となって続いていた。
一目見ただけで、ゆうに一万本はあったと思う、
それが皆顔をあげ、嬉々として踊っていたのだ。

入江の小波(さざなみ)もそれに応じて踊ってはいたが、さすがの
燦めく小波でも、陽気さにかけては水仙には及ばなかった。
かくも歓喜に溢れた友だちに迎えられては、苟(いやしく)も
詩人たる者、陽気にならざるをえなかったのだ!
私は見た、眸(ひとみ)をこらして見た、だがこの情景がどれほど豊かな
恩恵を自分にもたらしたかは、その時には気づかなかった。

というのは、その後、空しい思い、寂しい思いに
襲われて、私が長椅子に愁然として身を横たえているとき、
孤独の祝福であるわが内なる眼には、しばしば、
突然この時の情景が鮮やかに蘇るからだ。
そして、私の心はただひたすら歓喜にうち慄(ふる)え、
水仙の群れと一緒になって踊り出すからだ。
(平井正穂訳)

 どこまでも大自然の営みの中にいて、いかに人間は孤独であるかということを訴えかけているようである。

ウィリアムはやがて1802年、32歳でドロシーの友人でもあったメアリー・ハチンソンと結婚する。この時の面白い逸話が残っている。

結婚式前夜、ドロシーは兄の結婚指輪をはめて過ごしたという。翌日兄に指輪を返そうとするとウィリアムはそれを押しと止めた。そのあとで返してもらい結婚式に臨んだのだが、ドロシーは結婚式に出席せず、窓から見つめていたという。

ドロシーとは幼い頃別々に暮らしていたこともあり、ふたりの間には兄妹以上の感情があったのではないか、などと考えるのはゲスの勘ぐりというものだろうか。



第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

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