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第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』

 みなさん御存じ、超有名な20世紀を代表する詩人で作家である。

 コクトー(1889〜1963)は裕福な家庭の三人兄弟の末っ子として生まれた。父は、彼が8歳のときにピストル自殺している。ある文献によると、父も男色の気があったらしい。

 少年時代から「劇場遊び」にひたっていたというから、早咲きだったわけだ。読んでいってもらえば分かるが、どうも映画好きにはこうした人が多い。

 コクトーは高校時代にマルセル・プルーストに出会い、これがきっかけで文学の道に進む決意をする。

 17歳のときに30歳の駆け出し女優マドレーヌ・カルリエに夢中になったというからこのころはまだ女性に興味があったのだろうか。1909年に自費出版で最初の詩集「アラディンのランプ」を出す。

 時の大女優、サラ・ベルナールの相手役、エドアールド・マックスに気に入られたのが縁でシャンゼリゼのフェミナ劇場で朗読をやり詩人デビューしたというのは知られた逸話だ。この劇場にはマルタン・デュガールも出入りしていた。

 やがてコクトーは作曲家のエリック・サティや画家パブロ・ピカソらと親しくなっていったが、彼らをてなずけ「接着剤」となったのが、かのココ・シャネルだ。

 コクトーはやがて俳優のジャン・マレーにぞっこんとなる。マレーは生涯コクトーを愛したという(「美女と野獣」の野獣役をやったわけだ)。

 一方で溺愛した天才作家レイモン・ラディゲの、わずか20歳という早世にショックを受けてこのころからアヘンに手を出し、中毒になってしまう。このアヘン中毒から救ったのもココ・シャネルだ。

 さらにはロシアの有名なバレエ団を率いる、ディアギレフとの関係も有名である。

 1936年に来日しているが、その時六代目尾上菊之助と会っている。後年作ることになる「美女と野獣」におけるメイクは、その時にみた歌舞伎「鏡獅子」から影響を受けたとされている。

[あらすじ]

 さて映画の話に移ろう。彼は1930年に初めて映画撮影に挑戦している。これが『詩人の血』というモノクロ51分の作品である。

 コクトーは「シネマ」といういい方が嫌いで「シネマトグラフ」といっていた。これは映画の父といわれるリュミエール兄弟への敬意であった。この映画だがNYで公開したところ、なんと20年以上もの長きにわたってロングラン上映されたという記録が残っている。名作「アンダルシアの犬」と並ぶアバンギャルドの古典といわれる所以だ。映画がまだ珍しかった時代ゆえに、難解な作品でも受け入れられたのだろう。

 少し脱線するが、「アンダルシアの犬」というのはどういう映画かというと、1928年にルイス・ブニュエル監督が作った十数分の短編だが、目玉をカミソリでふたつにされる女性が出てきたと思えば、路上に切り落とされた手首が落ちていて、それを見つめるだけの女装した男や、麻痺した手の上を蟻の大群が這いまわっている・・・といった論理的な脈絡がまったくないシュールレアリズムの映像詩というべきもの。これにはサルバトール・ダリが原作に関わっていた。

  コクトーはこれを意識したのかどうか、こちら『詩人の血』もそれに、負けじとばかりにエキセントリックで過激な内容だ。映画は全部で4部構成になっている。

 まずプロローグで、仮面をつけたコクトーが現れ「詩はすべて紋章。故に詩人の血と涙の解読が必要である」という字幕がでる。そこへ巨大な工場の煙突が倒れ込む。

 第1部は、「傷ついた手、あるいは詩人の傷跡」というタイトルがついている。

 ひとりの画家(あるいは詩人?)が女性の顔をキャンバスに描いている。コクトー自身かもしれない。口を描くとそれが勝手に動き出したので、慌てて、驚いてそれを消そうとする。するとその口が手に乗り移って、その手が画家の体中を撫でまわす。キスされた画家は恍惚になって、夢の中へ落ちてゆく。

 第2部は「壁に耳あり」。第1部で画家の手から移った彫像が出てくる。その彫像が目を覚まし、詩人に命令する。「鏡の中に入れ!」詩人が飛び込むとそこはプールだった。詩人はホテルの廊下に立っている。ドアの鍵穴を覗いていると、人が殺されていたり、幼い少女が空中浮揚をしようと懸命に訓練していたり。女の子が現れピストルを手渡す。詩人は自分のこめかみにズドンと一発。すると頭上にヒイラギの冠が現れる。詩人は「もういやだ」と叫んで、ハンマーで彫像を壊してしまう。

 第3部は「雪合戦」。広場で子どもたちが雪合戦で遊んでいる。その雪玉のひとつがある少年にあたり、倒れてしまう。

 第4部は「聖体のパンを汚す」。倒れている少年の脇にテーブルがあって、そこで男と女がトランプをしている。(それは詩人と彫像だった)それをバルコニーから眺めている人たちがいた。詩人は手札にハートのエースがあれば勝てるので、倒れている少年の胸から心臓を取り出す。だがそこに守護天使が現れ、そのハートを奪ってしまうので、詩人は勝負に負けてしまうことに。しかたなくピストルで自殺すると、相手の彫像は牡牛を連れてどこかに去る。プロローグで出てきた工場の煙突が完全に崩れさる。

 シュールで幻想的な藝術作品といえる。これはまさに詩人ならではの発想であり、アバンギャルドの傑作といえるだろう。

 後年、ダリがコクトーに「俺の真似をしただろう」と詰め寄ったが、コクトーは完全否定、しかし彼は日記の中で影響を認めたことを記していた、という後日談がある。

 話を戻すと、コクトーは、それからは詩作そっちのけで都合6本の映画を製作した。

 「美女と野獣」(46)「双頭の鷲」(47)「恐るべき子供たち」(48)「オルフェ」(50)。遺作となった「オルフェの遺言」(60)を生んでいる。他にも脚本や原作に関わったものが少なくない。30年間で六本とは少ないようだが、資金の面での障害があったのが少ない原因かもしれない。だが始めの「詩人の血」はそのひな形といえるだろう。

 『神秘の事故、天の誤算、僕がそれを利用したのは事実だ。それが僕の全部だ・・・(堀口大學訳)』と言っている。



第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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