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第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

 もちろんご存知、賢治の書いた有名なファンタジーである。多分に寓話的な要素が詰まった現代の政治家には耳の痛い、いや目の痛いアニメーションだろう。

 それとともに、賢治という人がいかに先見の目を持っていたか、感心してしまう。もともとは盛岡の農学校に学んだだけあって、農業や林業への熱い思いはどれほどだったかが伝わってくる。貧しい農民が幸せに暮らせるにはどうしたらいいか、その理想を常に追い求めていた。

 この「グスコーブドリの伝記」は、かなり現代のものを取り入れて、原作の持つアフォリズムを大きくオーバーしているが、賢治の意図したものは正しく伝えられていると言えるだろう。

 賢治原作のアニメには、名作との誉れも高い1985年公開の『銀河鉄道の夜』があるが、これは同じ杉井ギサブロー監督によるもので、この監督は原作に新たな命を吹き込むことに定評がある。

[あらすじ]

 美しく豊かなイーハトーヴの森にブドリは父のナドリと母、それに妹のネリと共に幸せに暮らしていた。ところがある年、春になっても日がささず、夏を過ぎても寒いままで、それは翌年も続いた。ついに深刻な食糧不足になり、父と母は食べ物を探しに出たまま戻らなかった。そしてネリは謎の男・コトリにさらわれてしまう。

 ブドリは仕方なく山を降り、町に出ることにした。その途中でひとりぼっちになって力尽きたブドリを救ったのは畑を耕している山師の赤ひげだった。そこで仕事を覚え、イーハトーヴ市へやってくる。そこでは知り合いになったクーボー博士の紹介で市の火山局に勤めることができた。

 ある年、また町を冷害が襲うことが決定的になり、ブドリたちは火山を利用してそれを止めようと考えるのだった::。

 都市は中世ヨーロッパの城塞都市ふうだし、空飛ぶ現代的な飛行船とか、建物の間を縫って走るモノレールなど、近未来の乗り物や建物が出てくるが、もちろん原作にはない。これはあくまでもオマケ。ビジュアル的楽しさを付加してくれたわけだ。そうすることでこの原作の持ち味や価値が変わるわけではないことは言わずもがなだ。

 では本題に移ろう。このアニメが始まって最初の頃、ブドリが森の中の学校に行くシーンがある。まだこの世界に何事もなかった幸せな時代。

 教室で先生が有名な「アメニモマケズ」の詩を朗読する。これから起こる苦難の歴史を予知するかのように。そしてグスコーブドリは、この詩をなぞるように艱難辛苦を耐えて生きることになる。

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萱ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイゝトイヒ
北ニケンクワヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

 これが全文だが、ここで余談。実はこれは教科書などに載っている流布形なのだ。実際はこのあとに左のような文がついている。しかしこれでは宗教めいてしまうという理由からだろうか、文学的ではないと考えられたからだろうか、現代カナ遣いでは、教科書やほとんどの文学書からこの部分が削られている。

   南無無邊行菩薩
  南無上行菩薩
 南無多寳如来
南 無 妙 法 蓮 華 経
 南無釈迦牟尼佛
  南無浄行菩薩
   南無安立行菩薩

 まあ、目くじら立てるほどのこともないが、確かに文学的ではない。これは賢治がいかにこの詩に、このような心情を込めたかという証でもあるだろう。この項は詩の解説書ではないのでそれ以上追求はしないが、最後の二行で、自分がそうではないからこそ「サウイフモノニ/ワタシハナリタイ」と願いを込めていることが全てを物語っている。

 ともあれ、このアニメーションには賢治の希求した「幸せの生き方」というものが存分に語られていると言っても過言ではないだろう。


第36回●鈴木志郎康(1938〜)

第35回●吉増剛造(1939〜)

第34回●塔和子「風の舞〜闇を拓く光の詩」

第33回●田村隆一「恋の罪」

第32回●高村光太郎「智恵子抄」

第31回●室生犀星作品『あにいもうと』

第30回●宮沢賢治その3〜「グスコーブドリの伝記」

第29回●宮沢賢治、その2「モンスターズクラブ」

第28回●宮澤賢治、その1「わが心の銀河鉄道〜宮澤賢治物語」

第27回●紫式部(生没年不詳)

第26回●西條八十「人間の証明」

第25回●野口雨情(1882〜1945)

第24回●金子みすゞ(1903〜1930)

第23回●日本映画編「寺山修司」

第22回●ホルヘ・ルイス・ボルヘス「デス&コンパス」

第21回●マルグリット・デュラス「インディア・ソング」

第20回●シルヴィア・プラスの『シルヴィア』とテッド・ヒューズ

第19回●エドガー・アラン・ポーの『大鴉』から

第18回●パゾリーニの作品群

第17回●T・S・エリオット『愛しすぎて〜詩人の恋』

第16回●ウォルター・ホイットマン「いまを生きる」

第15回●R・M・リルケ

第14回●エミリー・ディキンソン「ソフィーの選択」

第13回●ランボー&ヴェルレーヌ『太陽と月に背いて』

第12回●プーシキン『オネーギンの恋文』

第11回●コールリッジ『愛と哀しみの果て』

第10回●E・E・カミング『ハンナとその姉妹』

第9回●W・H・オーデン『フォー・ウェディング』

第8回●チャールズ・ブコウスキー『酔いどれ詩人になるまえに』

第7回●パブロ・ネルーダ『イル・ポスティーノ』

第6回●ヨハン・ゲーテ『ゲーテ〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』

第5回●ジョン・キーツ『ブライトスター いちばん美しい恋の詩(うた)』

第4回●イエーツ『ノーカントリー』と『ミリオンダラー・ベイビー』

第3回●ウイリアム・ワーズワース『草原の輝き』

第2回●フェデリコ・ガルシア・ロルカ『ロルカ暗殺の丘』

第1回●ジャン・コクトー『詩人の血』


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